デジタルマーケティング担当者の1つの重要な仕事として、メールマーケティングが挙げられます。日々、ニュースレターやウェビナーなどの集客メールを配信されているのではないかと思いますし、新規リードに対してはステップメールを活用したアプローチも一般的になってきました。いずれの目的にしても、個々のメールのパフォーマンスを上げることは、マーケティング全体の成果を上げるために取り組んでいくべきことです。
今回の記事では、Marketo Blog(英語)の中から、HTMLメールとテキストメールの効果に関して、自社内で分析した記事をご紹介します。
メールマーケティング担当者の悩み
メールマーケティング担当者の仕事というのは、とても神経をすり減らすものです。キャッチ―なメールコピーを作り、役に立つであろう情報を優れた形で顧客に届けるために工夫を凝らしたメールのデザインを作成し、50万人にメールを送信したとしても、誰もメールを開かなかった、クリックしなかった、と分かったときの悲しみというのは、想像に難くないでしょう。ただ、これは想像の話ではありません。実際にこういったケースが存在することは間違いないですし、きっとメール担当者がお読みいただいている場合には、心にはグサッときているはずです。こういったことがあると、もしかすると眠れなくなったり、憂鬱な気分にどっぷり浸かってしまったり、さらにはもう二度とメールなんて書きたくない、と思うかもしれません。
話を本題に戻しますが、私たちメールマーケティング担当者は、ベースの考えとしては作成したメールをリード(見込み客)に気に入ってもらいたいだけなのです。そのため、見栄えの良いHTMLベースのメールを送信することが多いです。HTMLメールはぱっと見で視覚的に訴求でき、読者にブランドイメージを植え付けることができます。しかしながら問題は、見栄えのよいメールを送ればそれでマーケティングの目的を果たすことができるのか、ということです。このブログでは、HTMLメールとテキストメールのどちらがより効果的か、ということを検証していきます。
メールはランディングページのようなもの
見出しの通り、メールはランディングページのようなものです。というのも、メールにも、ランディングページにも共通のゴールがあります。それは、コンバージョンです。効果的なランディングページを作る要素としては以下のものが挙げられます。
- 明確なコピー(見出しや件名)
- すぐに分かるコール・トゥ・アクション(CTA*)
- 矢印や効果的な色の対比などを用いた視覚的な訴求
- フォーム
こういったものをどのように配置するかを私たちマーケターは日々考えています。それでは、改めての質問ですが、メールとランディングページではどれほどの違いがあるでしょうか。もうあなたも察したかもしれませんが、メールにおいても、ほとんどのランディングページにおいて既にあなたがやってきているような簡単な公式があります。
それは、余計なものはできるだけ削り、コンバージョン率を上げることを意識することです。それでは、HTMLでつくられているマルケトのメールを見てみましょう。
一見、上記のメールでは、オファーは1つに絞られており、CTAは分かりやすく目立ち、本文の余計な文章は削られているので、視覚的に見やすいレイアウトに見えます。しかし、この視覚的に感じのよいレイアウトをよくよく見ると、以下の点が気になります。
- 5種類のリンク(Marketoのロゴ、3つのSNSボタン、バナーリンク、メール本文内のリンク、CTA上のリンク)
- 564×355ピクセルのヘッダーバナー(受信者が読み始める前に最低でも355ピクセル分のデータを読み込む時間がかかる)
- 564×65ピクセルのフッターバナー
- 564ピクセル幅のレイアウト(レイアウト幅にメール本文が押し込まれることで、テキスト行が改行され、行数が余計に増えている)
HTMLメールの機能の多くは、ビジュアル的なブランディングやさまざまなデバイスの幅に合わせたレイアウトの対応に役立つ一方、最も重要な要素である、メインのCTAやオファーに読者が集中する上では妨げになっています。そこで、あらためて考えてみてください。ロゴやSNSボタンのような要素をメールに含めたり、本文中にハイパーリンクを設定したりすることは、メールのパフォーマンスを損なうでしょうか?見て欲しいリンクへのクリックを逃しているのでしょうか?
「HTMLメールとテキストメールのどちらがより効果的か」データはこう語る
5つの異なるメールを送信した結果、テキストメールには以下の特徴があることが分かりました。
- 開封率はHTMLメールとほぼ同じ
- CTOR*は11%高い(統計的に95%の有意)
- CTR*は8%高い(統計的に86%の有意)
ただ、これらの数字だけで全てを判断するのはよくありません。95%の有意であったとはいえ、実数としてはCTORの母数が最も少ないため、この数値をもってテキストメールが効果的だったと自信を持って言うことはできません。またCTRに関してもさらなるテストが必要です。それでは、もう少しデータを詳しく見てみましょう。
HTMLメールの全体のクリック率に関する話についてはここまでにして、個々のリンクのパフォーマンスに目を向けてみます。すると、メールの目的とされるリンクへのクリックが必ずしも達成されているわけではないことがお分かり頂けるのではないでしょうか。実際、クリックのほぼ16%は、SNSボタンなどのほかのリンク先に移動しています。メールの目的はある特定の訴求をきちんと伝えるためのはずです。つまり、そのメールで目的としているリンク(すなわちオファーのリンク)のクリックをしてもらうことがゴール、メールの目的のはずです。
そこで、メールの目的とされているリンクのクリックだけに注目して数値を分析しました。すると、データはテキストメールの圧倒的優位を示しています。テキストメールのパフォーマンスは以下のとおりです。
- 開封率はHTMLメールとほぼ同じ
- 目的とされているメールリンクのユニーククリック率*は21%高い(100%の統計的有意)
- 目的とされているメールリンクのユニーククリックスルー率*は17%高い(99%の統計的有意)
結果、テキストメールにおいて、読者を1つのリンクに集中させることで、目的とするメールのリンクへのクリック率を上げることが分かりました。
実は見栄えを良くしたHTMLメールが、単純なテキストメールと比較すると「劣る」ということはマーケターにとって少し残念な結果です。ただ、もちろんこういった数字だけがメールマーケティングのすべてではありません。私たちマーケターは継続的にキャンペーンを実施し、改善していきながら最高のプロセスを見つけていく取り組みが必要であることは間違いありません。皮肉なものですが、この結果のせいで私たちマーケターはさらにメールマーケティングに苦心することになりそうです。
あなたはこの結果をどのように思いますでしょうか。同様のHTMLとテキストベースのテストを実行して違う結果が出たことがありますか?ぜひ社内でも社外でも話し合ってみてください。
※コール・トゥ・アクション:対象の顧客にとってもらいたい行動のこと。ランディングページであればコンバージョン、メールであれば目的としているリンクのクリックなどを指す場合が多いです。(メール内にあるCTA以外のリンク、例えば企業HPリンクなどはCTAではありません)
※CTOR(click to open rates):CTORは「宛先リストの中でメールを開封した人」を分母にして算出します。つまりCTORは「(クリックした人数÷開封した人数)×100」で計算されます。
※CTR(click through rates):CTRは「宛先リストの総人数」を分母にして算出します。つまりCTRは「(クリックした人数÷配信数)×100」で計算されます。
※ユニーククリック率:配信した電子メールの総数に対し、メール文中のリンクが1人1クリック(1人がメール内の複数のリンクをクリックした場合も1、ユニーククリック数と言われる)された割合のものをユニーククリック率という。
※ユニーククリックスルー率:ユニーククリック数をユニーク開封数(1人がメールを3回開封した場合も1)で割ったものです。 この数字が低い場合、メールの件名と本文を見直した方が良いでしょう。 高い場合は、ユーザからのコンテンツへの評価が高いことを表しています。
本ブログは2017年7月にMike MaddenがMarketo Blogに投稿したものを翻訳し、加筆修正したものです。