導入から1年未満で問い合わせ倍増!SFA未導入でもMarketo Engage×Excelでボトルネックを解消したフリービットの営業変革

Marketo Engage(以下、Marketo)のユーザー様をゲストに招き、Marketo活用について存分に語っていただく「Marketo Studio(通称Mスタ)」。第4弾となる今回は、フリービット株式会社からインフラ事業本部 法人営業部 企画マーケティングチーム 古澤 嘉啓氏にお越しいただきました。

古澤氏は、2017年4月に新卒で入社後、約1年間の法人営業担当を経て、クラウド部門の企画・マーケティング課に異動。その後、組織体制の変更にともない、現在は営業部に在籍しながら、企画・マーケティングをご担当されています。

ほぼおひとりでMarketoを運用されている古澤氏は、Marketo導入から約1年が経った今、これまでをどう振り返り、その成果を証明されてきたのでしょうか。

アドビからはフリービット様の担当CSM 中島 郁と、モデレーターとして北川 千博が参加。本イベントはオンライン開催ということで、視聴者の皆様からの質問もリアルタイムで交えつつ、詳しくお話を伺いました。

Marketo導入以前に抱えていた8つの課題

2000年に創業したフリービット社は、今年で20周年を迎えます。「Being The NET Frontier! 〜Internetをひろげ、社会に貢献する」の企業理念のもと、インターネット接続事業者へのインフラ等提供事業/MVNE事業、MVNO事業及びクラウド事業/インターネットビジネスに関するコンサルティング事業を展開されており、2019年のMarketo導入時には、以下のような事業部門制を採用されていました。

このように4つの事業部門の中で、企画・マーケティング部があったのは、クラウド部門だけ。その他の事業部門では、営業が企画・マーケティングの仕事を兼務していたそうです。そこから今年の7月に、全サービスを横断的に扱う機能別組織へと組織再編が行われました。

「これにより、私の担当するサービスが増え、サービスサイトやリードの統合が必要になりました」(古澤氏。)

現在の古澤氏のミッションは、展示会出展企画、サービスサイト運営、Marketo運用、ハウスリスト管理、Google広告運用、メルマガ/コンテンツ作成、プライベートセミナー開催といった企画/マーケティングの仕事に加え、仕様書/契約書/汎用提案書作成、営業同行、サービスデリバリー、お客様導入支援、ユーザーサポート、ISMS監査対応と、サービス側の業務まで多岐に渡ります。

お聞きする限りは非常に大変そうですが、純粋な企画・マーケティングの仕事以外もご担当されることにより、「『先日のメルマガ、どうでしたか?』とお客様の声を直接聞けるので、施策を考える上で役に立っている」と古澤氏は語ります。

実は、フリービット社ではMarketo導入以前に別のMAを導入していました。しかし、古澤氏が企画・マーケティング職に配属された当初、クラウド部門が抱えている問題を洗い出してみたところ、次のようなものがあったと言います。

<フリービット社がMarketo導入以前に抱えていた課題>

・問い合わせ数が足りない...フリービット社はお客様のインフラを支える裏方の会社。フリービットという名前が表に出ず、オーガニックで検索する人がとても少ない。

・問い合わせの流入経路がわからない...webサイトトラッキングの概念がなく、入力フォームも1つしかなかったため、お客様がどのページを見て問い合わせに至ったのか把握できない。

・誰が何の資料をダウンロードしたかわからない...資料のダウンロードページが1つしかなく、フォームに必要事項を入力したら、複数の資料をダウンロードできる状態になっていた。営業は何をもとにフォローしていいのかわからない。

・顧客リストをSansanとMAのそれぞれにインポートする手間がかかる...SansanとMAが連携しておらず、顧客リストをCSV形式でインポートする際、データのフォーマットをそれぞれの様式に揃えるために多くの工数を要していた。

・MA内でセグメントが切れておらず、メルマガは一括配信のみ...リードの属性はもちろん、どこで取得したかによっても分類がされておらず、メルマガは一括配信しかできていなかった。

・MA内のセグメントが切れておらず、新規リードに対して過去メルマガの使い回しができない...既存のリードと新規のリードの切り分けができていないため、一度配信したメルマガを新規のリードに向けて再活用し、配信する制御ができなかった。隔週でメルマガを配信していたため、新しいコンテンツを作り続ける必要があった。

・MA内のリスト精査がされていないので、分析に手間がかかる...リードに役職や業種などの属性情報が一切付与されておらず、分析するためにはSansanとMAそれぞれからリストをエクスポートしてExcelなどで突合させる必要があった。

・リードの鮮度がわからない...誰がどんな行動をしているのか、いないのか、分析できていなかったため、営業活動に活用できない。

「他にも、"お客様を育てる"観点でコンテンツを作成していなかったため、サービスをより深く知ってもらうには、営業が直接アタックするしかありませんでした。これらの問題を解決するためにMarketoを導入したいと考えたのです」(古澤氏)

シンプルな設計で高い効果を生み出すには

2019年7月にMarketoを導入してから、古澤氏が取り組んだことは、次の通りです。

・リードの精査...旧MAからMarketoに移行するにあたり、データをクレンジングした。

・ダウンロードコンテンツの作成...ナーチャリングを強化するために、注力サービスに関するダウンロードコンテンツを9つ作成した。

・デフォルトプログラムの量産...誰が何をダウンロードしたのかを管理するために、資料ごとにフォームとLPを分けて、各施策の成果を把握するためのデフォルトプログラムを45個作成した

・エンゲージメントプログラムの構築...新規のリードに対してステップメールを配信し、継続的な情報提供を行うために、2つのサービスそれぞれのエンゲージメントプログラムを作成。
※エンゲージメントプログラム=中長期的なコミュニケーションを実現するシナリオを作成する機能

・リードのセグメンテーション...Sansanの名刺情報をもとに、役職や業種でセグメンテーションを行う。

中島:ダウンロードコンテンツのところで、最低限これだけは用意しようと思われたのは、どんな内容だったのですか?

古澤氏:注力商材が仮想デスクトップサービスだったので、当初は働き方改革のテーマに当て込んだコンテンツを作りました。仮想デスクトップに関する一般的な技術情報から、うちのサービスを紹介するものへと、段階的に引き上げていくものです。すべてのコンテンツを配信し終わったら、営業の手を借りずとも、うちのサービスについてすべて理解してもらうことが目標でした。

中島:視聴者の方から質問です。「エンゲージメントプログラムで、どのようなシナリオを組んでいるのか、気になります」と。

古澤氏:コールド・ウォーム・ホットに分けて、配信頻度を分けることに主眼を置いています。そもそもMarketoの前に使っていたMAでは、リードの鮮度がわからないという課題があったので、まずはセグメントを切らずにメールを一括配信してみて、それに対する反応があるかないかによって、そのリードが生きているのかどうかを見極める目的もありました。

中島:初めはあえて複雑な分岐はさせないというのもポイントですよね。

古澤氏:そうですね。かつて隔週で新しいメルマガを作成していましたが、Marketoにしてから1年間で9本しかメールプログラムは作成しておらず、私の工数が大幅に削減できましたし、お客様に対して漏れなくコンテンツを配信できるようにもなって、とても良かったと思っています。

中島:シンプルに組まれているところがいいですよね。エンゲージメントプログラムでお客様に必ず見てもらいたい情報は自動で配信されるようにして、あとは単発のものはメールプログラムで作成されるという。もうひとつ、視聴者の方から質問です。「営業からのフィードバックはいかがでしたか?」と。

古澤氏:「お客様が何をダウンロードしたかがわかるだけでも素敵だ」ということで、インバウンドに対してのフォローがやりやすくなったと評価していただいています。資料ダウンロードの情報は営業のメーリングリストにアラートを発行しているので、営業が積極的にフォローしてくれるようになりました。

リードの管理から効果測定まで、すべてはExcelで行う

フリービット社ではSFAは導入しておらず、問い合わせの情報は流入経路とともに、すべてExcelで営業に渡されています。

Marketoを導入したことで、お客様の流入先がしっかり把握できるようになったほか、MarketoのWebhookでSansanと連携して、新しい情報を自動で取得できるようになったり、問い合わせだけでなく、Webサイトの流入回数に応じてアラートを発行できるようになったりするなど、さまざまな改善を図れたと話す古澤氏。

「問題の解決だけでなく、Marketoを入れたことでもう少しがんばれるようになったこともあります。展示会だけでなく外部セミナーに予算を割いて、温度感の高いリードを獲得できるようになったり、広告に予算を割いて、積極的にリードを取りに行けるようになったり。Marketoで土台を整えられたからこそ、『リードが増えても、ちゃんと活用できるよね』と、社内の意識が変化しました」(古澤氏)

また、コロナ禍でウェビナーが増えたことで、「Zoom WebinarとMarketoの連携が非常に役に立っている」と言います。「参加と欠席のステータスが自動で変わるため、フォローメールを自動で出し分けられますので、私の工数がかからず、サクッとウェビナーができるようになりました」。

さらに、営業に渡すリードの質が上がったことで、「必ずしもフィールドセールスが訪問する必要はなく、電話でクローズできるものは電話でクローズするか、いったん電話で温度感を探ってからにしよう」という意識も芽生えてきたと話す古澤氏。「Marketoで課題を解決できただけでなく、施策やアプローチの種類を拡張できたのも、すごくいい傾向だと思います」。

中島:ここでまた視聴者の方からの質問です。「何名でMarketoを運用されていますか?」ということで、いかがでしょうか。

古澤氏:企画・マーケティングチームは私を含めて2名体制です。私が施策の検討やプログラムの作成を担当し、もう1名はLPや画像の作成といったクリエイティブ面を担ってくれています。私が営業同行等お客さまや営業担当者と接する機会も多く、コンテンツの作成に関してもそこまで苦労することはないので、MAの運用が1人であってもそこまで苦労することはないかなと思っています。

中島:では、Marketoを導入した成果は、いかがでしたか?成果をどのように計測されているかもあわせて、教えてください。

古澤氏:前年度(2018年5月〜2019年4月)とMarketo導入後(2019年7月〜2020年4月)を比較してみると、後者の方が、期間が短いにもかかわらず、問い合わせや資料ダウンロードの数は、前年度比2倍の成果が上がっています。これは社内稟議で掲げた目標の3倍を達成する数字ですね。思いのほかMarketoを導入してから、わりとすぐに運用を軌道に乗せることができたので。問い合わせ総数に占めるMarketoのナーチャリング施策の割合が50%。Google広告の割合が10%なので、新規で獲得するよりも既存リードをナーチャリングしたほうが、問い合わせにつながっていることもわかっています。

中島:マーケティングの成果をまとめるときは、どのように集計されていますか?

古澤氏:営業の数値を含めたExcelで集計しています。その際、各施策がどれくらい効果を上げられたか、という形でまとめるようにしています。先ほどの成果はMarketoがあってこそではあるのですが、Marketoはあくまですべての土台なので、Marketoが直接効果を出しているという説明にはしていません。

中島:なるほど。具体的な数字は出せないと思いますが、リードの数は何件くらいあるのでしょうか。リードが多すぎると、営業の案件管理が追いつかなくなるのではないでしょうか?

古澤氏:リストはどんどん増えていますが、コールド・ウォーム・ホットに分けている中で、営業のリソース状況に応じて、熱い順にフォローしてもらうという感じですね。例えば、資料を複数ダウンロードしていれば営業のフォローをお願いしていますが、営業が忙しくて手が回らない場合は、エンゲージメントプログラムのホットのステージに入れ、対象のメールを配信しながらMarketoで管理しています。

中島:では最後に、今後の取り組みについて、教えてください。

古澤氏:Marketo導入前の課題が改善されたことで、新たな課題が増えてきました。例えば、コールドやウォームに留まっているお客様をいかにホットに持っていくかです。具体的には、何らかのアクションに応じて施策を実施する、トリガーベースの施策をこれからMarketoに実装していくところです。また、オフラインの展示会に代わるリード獲得施策として、web広告の出稿先を増やすことも検討しています。
あとは、組織編成によってカバーしなければならない商材が増えたので、そのwebサイトを強化したり、他部署のSansanの名刺情報をマージしたり、といったことをしていく必要があります。
そして、オプトアウトしていないけれどずっと非アクティブが続いているリードに対して、どんなアクションをとるべきか模索しなければなりません。FORCASやLANDSCAPEのようなデータベース導入して非アクティブなリードに意味づけをしていく方策も練っていかなければならないと思っているところです。

中島:本日は貴重なお話をありがとうございました。