Instagramの画像埋め込みは著作権侵害!?公式見解で「API使用でも侵害」と発表

Instagramの画像埋め込みとは、Instagramが提供しているAPI(Application Programming Interface)※を使ってWebページにユーザーの投稿を表示させることをいいます。

 

Instagramの画像埋め込みは、これまで、まとめサイトなどを中心に、さまざまなWebページで広く利用されてきました。
Instagram以外にも、SNSの多くで埋め込み用のAPIが提供されており、それがもし、著作権侵害に当たるとすれば、世界的に数多くのWebサイトが対応を迫られることになるでしょう。

 

実は、2020年6月、Instagramによって、このAPIの画像埋め込みについての公式見解が発表されました。
本コラムでは、Instagramの画像埋め込みと著作権をめぐる裁判の判例についてもご紹介いたします。

 

※プログラムを連携させる仕組みのことで、一般的にWeb APIを指します。

 

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Instagramの画像埋め込みとは?

Instagramの画像埋め込みとは、Instagramが提供しているAPI(Application Programming Interface)※を使ってWebページにユーザーの投稿を表示させることをいいます。

Instagramの画像埋め込みは、これまで、まとめサイトなどを中心に、さまざまなWebページで広く利用されてきました。
埋め込みの利用で気になるのは、投稿者の著作権侵害ですが、Instagramの利用規約にはInstagram運営側は投稿を自由に使用できる旨が記載されており、実質的に「使い放題」に近い状態です。
→Instagramの利用規約はこちら

そして、Instagramが公式に提供しているAPIを使った埋め込みも「Instagram運営側の使用に準ずるからルール違反ではない」という解釈が暗黙のルールとされてきました。

ところが、2020年6月、Instagramが「画像埋め込み機能は、画像の使用を許可するものではない」という公式見解を発表しました。

※プログラムを連携させる仕組みのことで、一般的にWeb APIを指します。

米国での判例

Instagramがこの公式見解を示す直接的なきっかけとなったのが、米国で起きたInstagramの埋め込み機能を使った投稿掲載に関する2つの訴訟です。

マッシャブルの訴訟(2020年4月)

IT系のニュースサイト「マッシャブル(Mashable)」は、2016年に「社会正義と戦う報道写真家10人(原題:10 female photojournalists with their lenses on social justice )」を公開しました。
この記事に掲載する写真について、同メディアは報道写真家たちに写真の使用料として1点当たり50ドルを支払うとを提示したところ、フォトジャーナリストのステファニー・シンクレア(Stephanie Sinclair)氏が拒否したため、同メディアはInstagramのAPIを使ってシンクレア氏の公式アカウントから写真を埋め込みました。
そこで、シンクレア氏は「著作権を侵害された」として同メディアを提訴しました。

ニューヨーク州の連邦地方裁判所は、Instagramの利用規約を根拠に「著作権違反には当たらない」との判決を下しました。

ニューズウィークの訴訟(2020年6月)

政治や社会情勢などを扱う米国の週刊誌「ニューズウィーク(Newsweek)」も、Instagramの埋め込み機能を巡ってカメラマンから訴えられました。

同メディアは、カメラマンのエリオット・マクグッケン(Elliot McGucken)氏の撮影したDeath Valley(デスバレー)の写真の使用許可を依頼しましたが、マクグッケン氏は拒否。そこで同メディアは、InstagramのAPIを使ってシンクレア氏の公式アカウントから写真を埋め込みました。
マクグッケン氏は著作権侵害で同メディアを訴えました。

同メディアは、Mashableの判例があったため、判決には楽観的な見方をしていたといいます。

しかし、結果は「Instagramの利用規約には、投稿写真のライセンスを提供しているか十分な証拠がない」という判断を下されることとなりました。

2020年6月にFacebook が公式見解を発表

Instagramを運営するFacebookは、これらの裁判を受けて、2020年6月、APIの画像埋め込みに関する公式見解として、以下のような内容を発表しました。

  • 同社が第三者へサブライセンスを付与することは可能だが、埋め込みAPIに対しては与えていない。
  • 同社のプラットフォーム・ポリシーでは、第三者が投稿を使用する場合、著作権者から適切な権利を得ることを求めている。

今後は、投稿者が細かく投稿をコントロールできる機能が追加される?

同社はまた、今後、投稿単位でユーザーが埋め込みを許可するかどうかをコントロールできる機能を追加リリースすることを検討していることを明かしました。

現在は、ユーザーが埋め込みを拒否するには、投稿またはアカウントを非公開にするしか選択肢がありません。
もし、新機能が実装されれば、ユーザーは、埋め込み機能による画像の引用を拒否したい場合、「掲載させない」という選択がしやすくなるでしょう。

法的に問題がないなら、利用規約に関わらず埋め込み機能が利用できる可能性も

Facebook側が正式にAPIを使ったInstagramの埋め込みについての見解を示したとはいえ、著作権侵害に関して最も効力を持っているのは法律であり、利用規約にも勝ります。
訴訟になった場合は、法的に問題があるかどうか、その根拠がどこにあるかといった点が争点になります。

そこで知っておきたいのが、米国においてSNSの埋め込みに関する著作権侵害の焦点となってきた、いわゆる「サーバーテスト」です。

法的論争の焦点になりやすい「サーバーテスト」

ニューヨーク州の別の連邦裁判所では、Twitterの埋め込み機能をめぐり、掲載した側の責任を示唆したことがあります。その際は、サーバーの所在が焦点となりました。いわゆる「サーバーテスト」です。

「サーバーテスト」とは、対象となっている著作物がどのサーバーから提供されているかを問うものです。
APIの埋め込み機能を利用してWebサイトに投稿を表示させる場合、投稿された写真データはSNSのサーバー上にあります。このことから、「被告側は著作物を閲覧者へ配布したわけではない」と判断されるケースが多くありました。

しかし、裁判官によっては必ずしもこの「サーバーテスト」に根拠を置くわけではありません。
2018年に、プロアメリカンフットボール選手のトム・ブレイディ(Thomas Edward Patrick Brady Jr.)氏の写真をTwitterの埋め込み機能を使って表示させたWebメディアが訴えられた裁判では、ニューヨーク連邦地裁が「ウェブサイトが責任を追う可能性がある」との判断をしたことがあります。
この時はサーバーテストを根拠にせず、利用規約に基づいて判断されました。ニューズウィークの訴訟と近しい判決だったといえます。

まとめ

SNSの埋め込み機能に関連する著作権侵害の訴訟の多くは、掲載したメディア側が著作権者の意思を尊重していなかったことにより起きています。

上記でご紹介した米国の判例をご覧になればお気づきのように、訴訟になった場合は、APIによる埋め込み機能に関するサービス提供者の利用規約が絶対的なものではなく、裁判官が何を根拠にするかによって判決は変わってきます。

Instagramに関していえば、今後、新機能として投稿ごとにユーザーが埋め込みを許可するかどうかを決められるようになるまでは、掲載するWebメディア側が慎重な判断を行っていく必要があるでしょう。
特に、掲載している投稿について、ユーザー側から要望が届いた際は、ユーザーの意思を尊重した真摯な対応を行いましょう。