イベントマーケティングとは?メリット・デメリット、セミナー、参考本などまとめました!

イベントマーケティングとは、セミナーや展示会など主にオフラインでのイベントを実施することで見込み客との接点を持ち、自社製品やサービスについてリアルな情報の提供とより踏み込んだPRを実践し、営業効率の高いマーケティング活動を行うことを指します。

この定義だけをみると古典的な手法ととらえられがちですが、顧客に提供できる体験の濃さや、顧客の反応をリアルタイムに把握できる点でデジタルマーケティングの手法にはないメリットがあるとされ、再評価されているのです。

しかしイベントの実施そのものにコストがかかるぶん、導入の際には慎重なプランニングとアフターフォロー体制づくりが重要です。

イベントマーケティングはデジタルマーケティングと並行することでオフラインならではの強みを発揮できる手法であるとも言われます。

ここでは、新規顧客の獲得からリピート顧客の育成までに有効なイベントマーケティングのポイントを解説します。

イベントマーケティングとは?

イベントマーケティングとは、自社が主催するセミナーや展示会、交流会などのイベントによって顧客との接点を作り、企業や製品・サービスをPRするマーケティング活動を行うことを指します。

消費者がインターネットであらゆる情報に簡単にアクセスできるようになった現在だからこそ、オンラインで届けられる情報には限界があることが指摘されています。

そして、消費者に対面でリアルな情報を提供できるオフライン施策の有用性が新たに注目されるようになり、イベントマーケティングの手法が再評価されています。

なお、自社セミナーは基本的にはオフラインで実施するものでしたが、近年ではオンラインで実施するウェビナー(「Web」と「Seminar」を組み合わせた造語。主に動画によるセミナー)の例も増えています。

また、金融業界における「イベントベースドマーケティング(EBM、顧客の行動を起点としたマーケティング手法)」も「イベントマーケティング」と呼ばれることがありますが、ここでいうイベントマーケティングとは意義が異なります。

なぜイベントマーケティングが必要なのか

現在ではインターネットやスマホ、SNSの普及によりデジタルマーケティングが主流になりましたが、自社製品やサービスについての全ての情報をオンラインで伝えることには限界があると言われています。

例えば手触りや色合い、香りなど、付加価値の高い製品であるほどオンラインの情報だけでは事足りず、実際に手に取ってもらわないと伝わらない魅力があるものです。

また、展示会などで顧客と対面し、顧客の反応をリアルタイムで確認しながら商品の魅力を伝えていくことも、デジタルマーケティングに特化していては実現できない部分です。

イベントマーケティングは顧客にリアルな体験を提供することで、スペックだけではわからない魅力を実感してもらえるという強みがあります。

同時に、製品やサービスのPRが漠然としたものになることを避け、イベント情報が拡散される際には写真や動画、SNSなどさまざまなコンテンツにおいてもより効果的なPRとマーケティング活動を行える可能性があります。

このような理由から、イベントマーケティングの重要性と必要性が説かれています。

イベントマーケティングのメリット(効果・成果)・デメリット(課題)

オフラインを主体とした施策ならではの強みを持つイベントマーケティングですが、具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

メリット(効果・成果)

顧客にリアルな体験と密度の高い情報を提供できる

製品やサービスを紹介するための画像や動画、SNSなど、ネットの情報は日に日にリッチになってきています。

しかし、リアルな体験によって得た情報はマス広告やネットで得る情報よりもはるかに密度が高く、商品の手触りや微妙な色合い、香りなど、対面でないと得られない情報もあります。

イベントマーケティングでは、製品やサービスを顧客が実際に手に取ったり、使ってみたりすることでスペック以上の情報に触れ、魅力を体感してもらえる点が大きなメリットです。

デジタルマーケティングで提供される情報だけでははっきりとした違いがわからないような付加価値の高い商品については、この傾向は特に顕著でしょう。

見込み度の高い顧客にアプローチできる

イベントやセミナーにわざわざ足を運ぶという時点で、もともとその企業や製品・サービスに興味がある顧客に絞り込まれていると考えられます。

イベントマーケティングではそのような見込み度の高い顧客層に短期間で多数リーチし、効率的にアプローチすることが可能です。

また、いわゆる「来店型営業」が可能であるという点で営業活動の効率が高く、その後のコンバージョンが期待でき、結果的にリードクオリフィケーションが自然とできてしまうという点も大きなメリットです。

参考記事:

リードジェネレーションとは?手法・質・注意点・メリット・デメリットなどをまとめました!

リードナーチャリングし、リードクオリフィケーションする方法とは!?

実施後のPR効果が高い

イベントは顧客がその場に足を運ぶという点、来場者と主催者がインタラクティブなやりとりをできるという点でインターネット広告やマス広告に比べて記憶に残りやすい傾向があります。

その分、SNSなどで情報を拡散してもらいやすい傾向があり、イベント開催の手間や費用に見合ったPR効果を見込むことができるでしょう。

さらに、イベントそのものが雑誌やテレビなどの取材を受けてマスメディアに露出すれば、来場者以外の幅広い層に向けたPRがおのずと可能になります。

デメリット(課題)

効果はアフターフォロー次第

顧客との接点を創出することで高いPR効果を望めるイベントマーケティングですが、その特長ゆえに、他のデジタルマーケティング手法とは異なるデメリット(課題)があります。

たとえば、開催当日のトラブルで不手際が目立ってしまった、リハーサル通りにいかず時間切れになってしまった、イベントやセミナーの内容に対して来場客の反応が良くなかったなどの突発的な要素によりイベントそのものが失敗してしまうと大幅なイメージダウンにつながりかねません。

また、イベントそのものが成功した場合でも、実施後のアフターフォローを怠れば顧客の反響を確認できず、マーケティング効果を見込めないでしょう。

しかるべき効果を得るには事前の体制づくりが必要です。

イベント実施後の顧客情報管理や営業へのフィードバックなどを効率良く行えるよう準備しておきましょう。

来場者が少なければ赤字になる

イベントのROI(投資利益率)は集客に左右されます。ただし、集客を上げようとするばかりに本来のターゲット以外の人にアプローチしても購買活動にはつながりません。

イベントの開催にあたっては、来場が見込まれるターゲット層の人数をシビアに予測したうえで、その人たちが来たくなるような仕掛けを検討することが大切です。

イベント告知のための広告費が必要

イベント実施の際には事前の告知が必須です。集客を上げるためには自社メディアでの告知や既存顧客へのアプローチに加え、Webや雑誌、テレビなどのメディアに露出する必要があり、広告費がかかります

イベントの実施自体に手間とコストがかかる

規模や内容により差はあれど、イベントの準備項目は多岐に渡るため、他のマーケテイング手法に比べて大がかりでありコストがかかる傾向があります。

基本的な調達項目だけでも、イベント会場の手配、スペースデザイン、運営スタッフの管理、告知などが必要になります。これらすべてを社内のリソースで行おうとするとリソース面、ノウハウ面ともに限界があるでしょう。

イベントマーケティングの手法

イベントマーケティングには主に次の5つの手法があります。いずれの手法も、Webサイトやメールマガジンなどの手法に比べ、より体系立った情報の提供が可能です。

慎重なプランニングをもとに実施することで、より検討度合いの高い見込み顧客の獲得から自社のブランディング(認知度の向上)につながるでしょう。

セミナー(ウェビナー)

イベントマーケティングの代表的な手法。自社が開催する自社セミナーと、他社と共同で開催する共催セミナーとがあります。

セミナーには何かしらの課題やニーズを抱えた顧客が足を運ぶ傾向があり、ここから商談につながる効果も期待できます。なお、最近ではWebを通じて開催する「ウェビナー」を選択する企業が増えています。

展示会・見本市への出展

主にリードジェネレーションとリードナーチャリング、ブランディングを目的とします。自社開催であれば一定時間のうちに多数の見込み顧客と接点を持てるというメリット、他社開催であれば自社が接点を持たなかった見込み顧客の来場が見込めるというメリットがあります。

体験型イベント

クルマの試乗会や家電製品の体験デモなど、自社製品やサービスのPRに効果的です。

ミートアップ

あるテーマについて参加者同士で意見交換したり雑談したりと、セミナーよりもカジュアルで気軽に参加できる集まりという位置付け。リードの獲得よりもブランディングや採用活動のために実施する企業が多いです。

ユーザー交流会

ここでは既存顧客同士の交流会を指します。ユーザー同士のコミュニティづくりをすることによって、自社製品やブランドにさらに愛着を持ってもらうことが目的です。

成功させるために必要なこと

イベントマーケティングには一定の手間とコストがかかるため、慎重にプランニングすることで失敗を避けたいものです。

成功のためにはイベントの事前準備から当日の設営、また実施後の効果測定などその後の営業活動につなげる全体施策が欠かせません。

イベントマーケティングを成功させるために必要なステップは次の通りです。

1、イベントの目的を明確化し、目標を設定する

2、当日までの事前準備(ターゲットの明確化、事前告知コンテンツ準備、場所・日時・規模の決定、貸しスペースの手配など)

3、当日のオペレーション設計(スタッフ配置・管理、イベント運営サポート業者の選定など)

4、イベント実施後のフォローアップ検討(営業との連携)

5、イベントマーケティングの効果測定(PDCAにつなげる)

実施後の効果測定では、デジタルマーケティング戦略の策定とともに、有望見込み顧客との商談履歴の管理が可能な営業支援システム(SFA)や、既存顧客の統合的な管理が可能な顧客関係管理システム(CRM)などのマーケテイングツールを活用すると良いでしょう。

なお、イベントマーケティングの代表的な手法であるセミナーの集客では、集客までの期間をおおむね2~3週間はとること、告知には無料の外部サイトを活用すること、既存顧客にはメールマガジンを利用することなどが必要だと言われます。

参考記事:

展示会担当「このままじゃブレブレの展示会になってしまう…!コンセプトを決めなきゃ!」【第1話】

イベントマーケティングのKGI(目標)・KPI(目的)

イベントマーケティングのKGI(目標)とKPI(目的)は、たとえば展示会の場合、一般的に次のように設定します。

KGI(目標)=目標売上(円)

広告の費用対効果を見極める指標である「ROAS」をもとに目標売上の金額を決定します。
広告費に対する利益率を表す「ROI」と組み合わせれば、より精度の高い目標を設定することができます。
売上傾向が見えてきたら参照すると良いでしょう。

参考記事:

広告費の回収率を示す「ROAS」とは?ROIとCPAとの違い

KPI(目的)=部門別に設定(単位)

また、部門別の設定については、組織ごとの指標が会社ごとに異なっているため一概には言えないのですが、下記のようにKGIから逆算した数値にプラスした指標を設定しましょう。

営業責任者 …… 売上(円)

営業 …… アポイント数(Aランク名刺数)(件)、訪問数(件)、案件化数(件)、受注数(件)

インサイドセールス …… 有効アポイント数(B・Cランク名刺数)(件)

マーケティング …… 有効名刺枚数(枚)、お礼メールの開封率/お礼メールのクリック率(%)、アクション件数(件)

参考記事:

インサイドセールスとは?BtoBマーケティングにおける必要性

大規模カンファレンスを通じて市場認知を変える方法

イベントマーケティングのセミナー

イベントマーケティングを導入するにあたっての企画ノウハウ、マーケティングと営業との連携や実施後の受け皿となる社内体制づくり、顧客への具体的なアプローチなどを学べるセミナーをご紹介します。

イベントマーケティング

https://www.event-marketing.co.jp/

イベントマーケティングとは、MICE研究所が運用するイベントマーケティングに特化したメディアサイトです。

「News」カテゴリにてイベントマーケティングに関わるセミナーやイベント情報を更新しています。

アドビシステムズ株式会社(「マルケト」)

https://jp.marketo.com/events/seminar/

アドビシステムズ株式会社のMA(マーケティングオートメーション)ツール、「マルケト」のセミナーページです。

イベントの企画と運営オペレーションの構築、見込み顧客獲得後のフォローアップなどイベントマーケティングに欠かせない実践ノウハウを紹介するセミナー(ウェビナー)を実施。ほか、MAツールの活用による営業とインサイドセールスの効率化など、あわせて知っておきたいテーマのものも充実しています。

株式会社ジェネシスコミュニケーション(「マーケの強科書」)

https://genesiscom.jp/category/event/

株式会社ジェネシスコミュニケーションのコンサルタントがマーケティングの知見を紹介するWebサイト「マーケの強化書」のセミナーページ。マーケティングに関するセミナー(ウェビナー)が開催月ごとにまとめられ、共催セミナーも多数。

「全員テレワーク時代のマーケティングを考える ~Webセミナーからの動画活用と訪問しないメール営業のはじめ方~」など、時流に合わせたテーマも多数あるので自社のニーズにぴったりのものが見つかるでしょう。

イベントマーケティングの参考本

イベント開催にあたっての集客から顧客の獲得、リピート施策まで、イベントマーケティングを成功させるためのノウハウを学べる本をご紹介します。

セミナー・イベント主催で成功する71の秘訣

著:野津 浩嗣 出版:東洋経済新報社(2018年6月)

ウェビナー・セミナーの講師を初めて担当する方におすすめのノウハウ本。セミナーの内容に満足してもらって終わりではなく、ストーリー作り、仕掛け作りを通じてセミナーの先にある顧客の獲得とリピーター化のコツを解説しています。セミナー講師の話し方についての実践アドバイスもあり。

【目次の一例】

【第Ⅱ部 セミナー企画編】

第4章 クライアント獲得につながるセミナー7要素①2つのニーズがある

第5章 クライアント獲得につながるセミナー7要素②「ニッチ」という網をかけてみる

第6章 クライアント獲得につながるセミナー7要素③ターゲットの明確化

第7章 クライアント獲得につながるセミナー7要素④空きポジションを見つける

【第Ⅲ部 セミナーづくり編】

第8章 クライアント獲得につながるセミナー7要素⑤ストーリー性があるか

第9章 クライアント獲得につながるセミナー7要素⑥プログラムのつくり方は「おしり」と「3」

第10章 クライアント獲得につながるセミナー7要素⑦7つのしかけ

引用:Amazon

たった5人集めれば契約が取れる!顧客獲得セミナー成功法―全国No.1営業マンが初公開!

著:遠藤 晃 出版:ダイヤモンド社(2010年3月)

セミナー戦略と営業戦略に多数の実績を持つ著者が、セミナー営業で成功する方法を実践的に解説する本。セミナーを顧客との信頼関係を築く場所と位置付け、確実に成約につなげるためのステップを伝授します。マーケティング担当者だけでなく営業担当者、セミナー講師担当者にも参考になる内容が充実しています。

【目次の一例】

プロローグ 僕が顧客獲得セミナーを始めた理由

第1章 なぜ高確率で顧客化できるのか

第2章 高確率で顧客を獲得できる集客法

第3章 参加者をその気にさせるセミナーコンテンツの作り方

第4章 参加者の心をつかむ!契約率アップの講師術

第5章 参加者を個別相談へ確実に導く方法

第6章 「お願いします」と言わせる個別相談の進め方

第7章 お客さんとの関係を深めてドンドン紹介をもらう方法

引用:Amazon

人が集まる !行列ができる !講座、イベントの作り方

著:牟田 静香 出版:講談社(2007年4月)

イベント運営初心者のための入門書です。イベント担当未経験の主婦であった著者が行政関係の講座やイベントの運営を務めることになり、顧客の心に響くタイトルの付け方など細やかなアプローチで講座申し込み率3.3倍を達成。自身が集客に成功した体験を好例・悪例の引用でわかりやすく解説しています。

【目次の一例】

第一章 これさえあれば人が来る! 「面白さ」とは何か?

どちらの講座に人が集まったでしょう? その(1)

同じ趣旨の講座で明暗くっきり

この講座を聞いて私の役に立つの?

「私」が得する講座

タイトルが人を惹きつける

出席率も高かった

「私が行きたい講座」を作ろう!

第二章 ターゲットを絞れ

「誰にでも来てほしい」は誰も来ない

各世代それぞれにふさわしい講座

年齢差は男性も敏感

男性は「そば打ち」がお好き

引用:Amazon

まとめ

見込み顧客と直接の接点を持つことができ、よりリアルで説得力のある情報を届けることでブランディングや営業の効率化につながるイベントマーケティング。

オフラインのイベントを主体とする点では新たなものではないため、初めて担当する方でも集客のイメージを持ちやすく、取り組みやすいところがあるのではないでしょうか。

ただしイベント自体を成功させ費用対効果の高いものにするためには、実施後の受け皿となる社内体制の整備が欠かせません

オンラインの営業支援系マーケティングツールを活用した効果測定とアフターフォロー、営業およびインサイドセールスとのKGI・KPIの共有や連携を事前に検討して整備しておくと良いでしょう。

現在では、対面でのセミナーや展示会の代替としてウェビナーや「ライブ配信」を選択する企業が増えています。

イベントマーケティングは自社製品の特性やターゲットの情報をふまえて、オフライン・オンラインに限らずあらゆるマーケティング手法と比較検討しながら適材適所で実施しましょう。